コラム

 公開日: 2017-05-05  最終更新日: 2017-08-17

交通事故の賠償額の基準について

 交通事故に遭った千葉県の弁護士のブログが拡散されているようです。
 その記事は、自転車に乗っていた弁護士が自動車と衝突し、負傷したところ、裁判基準であれば約70万円の賠償が認められると予想されるのに、加害者側の保険会社は被害者が弁護士であることを承知の上で16万円の提示をしてきて、その後の交渉でも保険会社は賠償額を上げることを渋っていたというものです。


 
 交通事故の当事者になってしまうのは、被害者でも加害者でもいずれにもなる可能性は誰にでもあります。ちなみに、私自身は、信号待ちで追突されて物損事故の被害者になったことがあります。

 交通事故の当事者になった場合に驚かれるかもしれないのは、損害賠償の金額は、法律で決められているわけではないということです。
 「裁判基準」「保険会社基準」などと言われることはありますけれど、正確に「裁判基準」と言える法律の基準はありません。

 まず、交通事故の場合の損害賠償の法的根拠は、基本的に次の条文です。

民法
(不法行為による損害賠償)
第709条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

自動車損害賠償法
(自動車損害賠償責任)
第3条  自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。


 これらの条文では、損害の範囲あるいは評価方法について具体的な定めがあるわけではありません。
 もし、そのように具体的に定めてしまうと、その範囲にとらわれてしまって、実際に起こる様々な事案で適切な解決が図れなくなってしまう危険があります。


 そうは言っても、年間に多数の事故が発生している中で、イチから被害者に自由な主張・立証をしてもらって、損害の範囲や金額を個々の裁判官が決めるとなると、実務的には解決も遅くなるでしょうし、裁判官の当たりによって認められる賠償額に大きな開きが生じる危険もあります。

 そういった不都合を回避する実務上の工夫として、
日本の交通事故の損害賠償については、これまでの裁判例の積み重ねが書籍にまとめられて、その積み重ねを前提に新たに生じた交通事故の賠償額を見込むことができるようになります。
 業界で最もメジャーなのは『赤い本」と呼ばれる『損害賠償算定基準』というもので、毎年発行されています。
 こういったものを参考にして、上記の千葉の弁護士も損害額を70万円と算定したのでしょう。


 当然ながら、損害保険会社も、この基準は知っています。
 そして、保険会社には、それぞれの会社の内部で、提示する金額等の基準があり、その基準は「裁判基準」よりも低額です。

 では、なぜ、保険会社は、この「裁判基準」ではなく、より低額の賠償額を提示するのかについては、次の理由があります。
 「裁判基準」は、あくまで過去の裁判例等の結果であって、法律ではありませんから、そのような「基準」に保険会社が縛られなければならないわけではありません。

 また、保険会社としては、支払うべき損害賠償の金額が大きくなれば、その積み重ねで、会社の利益は減少しますし、結果として、契約者が支払う保険料の上昇を招くことになります。したがって、保険会社としては、自社の利益(出資者の利益)や顧客である保険契約者の利益を考えれば、できるだけ支払う賠償額を低額に抑えたいと考えます。これは、保険会社の立場からすれば当然のことです。
 そうして、結果として、裁判になる前には、保険会社としては、上記の「裁判基準」よりも低い金額の提示をして、できるだけその基準より低い金額で示談をまとめようとします。

 弁護士に相談したりせずに、保険会社の提示したのを受け入れた人は、裁判になれば得られた可能性のある金額よりも相当低い金額の賠償しか受けていないものと思われます。

 裁判になったら、その基準と変わらない金額の賠償責任が認められてしまうであろうという予想から、交渉の結果として、保険会社は示談の場合では最終的にその基準による賠償額を認めるかもしれません。



 なお、交通事故にせよその他の事故にせよ、「裁判基準」があれば自動的に損害賠償額が算定できるというものではなく、損害の範囲やその金額の認定が悩ましいものもあります。
 また、交通事故は、損害額の算定の他にも、過失割合など問題になる点も少なくありません。
 そのため、専門知識のない方が自分で対応するのは困難なことが多いと思います。

 被害者にせよ加害者にせよ、もしその立場になった場合は、弁護士に早期に相談し、依頼すべきです。

 弁護士費用の心配がないように、任意保険の弁護士費用特約には加入しておくのがオススメです。

 弁護士ではないところに相談したりするのは、適正・適法な解決できない危険もありますし、不当に手数料や寄付を取られる危険もありますので、その点も注意が必要です。

 
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(札幌弁護士会所属)
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