コラム

2013-06-25

労働事件(1)~弁護士が介入する労使間紛争

労働事件は弁護士によって受任する事件の傾向が分かれる分野です。労使関係というように労働者側と使用者側は対立関係になりがちなので、その対立が当事者間で解決できないほどに深まったときに弁護士に解決を依頼される場面は少なくありません。

と、ここまで書いてきましたが、私自身は企業において労使対立があるというのは、それだけで不健全な状態だと思っているので、できれば労使対立が起こらないような企業経営をしていただきたいし、そのためのアドバイザーとして弁護士が力を発揮できる場面は数多くあるのではないかと思っています。

その意味で、経営者の皆さんには、労働側と深刻な対立になる、ならないにかかわらず、経営課題を検討する際には、弁護士のアドバイスを日常的に受けるような習慣をつけるべきだということを申し上げたいのです。

私が中小企業診断士の資格を取った理由

実は、私が平成20年に中小企業診断士の資格を取得して登録した目的も、企業経営者の皆さんが日常的に相談するといっても、そもそも事件になっていないのに弁護士に企業経営の相談をすることができるのかという違和感を取り除いてもらう目的からでした。つまり、私が企業経営の支援を志向しているというメッセージのつもりで登録したのです。

そのための受験勉強は、平成18年の12月から開始して、19年の8月上旬に択一試験、10月下旬に筆記試験、12月中旬に最後の口述試験を受けて、年末に合格発表にたどり着いたので、まるまる一年がかりの挑戦でした。50歳になってからここまで一生懸命勉強することになるとは、受験勉強を始めるまで考えてもいなかったのですが、思いのほか大変な試験で、1年で合格できなければやめようと思って挑戦した結果の合格でした。

今回は合格体験記ではないので、これ以上試験のことは書きませんが、残念ながら中小企業診断士の資格を取っただけでは、企業経営者の方たちから日常的に相談したいというリクエストをいただくには至っていません。やはり、弁護士が企業経営に関与する価値をこれからも積極的に発信していかなければ、弁護士に対する企業側の意識が変わることはないのだと思っています。
※マスダの中小企業診断士資格取得の奮闘記は「コンサル弁護士の『勝手にひとこと』」をご覧ください。  

弁護士が手掛ける労使間紛争(経営者側と労働者側)

話を労使の問題に戻しますが、私自身は労使間紛争には経営者側で関与することが多いです。その理由は、弁護士経験が長くなったせいで企業の顧問先もある程度の数になってきたことや、ロータリークラブなどで経営者の知り合いが増えると、自然とその紹介などで経営者側の相談が多くなるからです。

一方で、労働組合に関係の深い弁護士などは、受任する労働事件の大半は労働者側の事件ということになります。組合に加入している労働者の人たちであれば、事件を依頼するのもその組合の関係の弁護士ということになりますし、組合に入っていなくても、労働者側の事件を数多く扱っているということがクチコミなどで広がって、受任が増えることになるからです。

もちろん、経営者側で代理人をすることが多い弁護士が労働者の代理人をしてはいけないということはありませんので、私自身が労働者側の代理人になることもあります。

経営者側は負け筋が多い?~経営者側の対策と弁護士の対応

そんな経験の中で、労使の争いを見たときに思うのは、弁護士のところに持ち込まれる事件は、かなりの割合で使用者側が負け筋だということです。それは、先ほどの話にも重なりますが、経営者が労働者に対する懲戒や解雇の処分をするときに、きちんと段取りを踏んで手続をすることを怠ったり、不用意な言動が法律違反と評価されたりする事実を、後から修正することがとても難しいからです。

そのような事態を回避するためにも、日常的に弁護士に相談できる体制を用意しておく必要があるのですが、弁護士の側も顧問料という固定収入が得られれば事務所の経営が安定するということがあるので、企業経営の皆さんには「顧問契約をしていつでも弁護士に相談できる体制を作っていただくことが、お互いにプラスになりますよ」とお勧めしている訳です。

それと、相談を受けて大変残念なこともあります。経営者の中には労働者の権利に対してあまりにも無理解な人もいるのです。そのような経営者に対しては、弁護士の側も法律上無理な主張を改めるよう説得するわけですが、どんなに説明しても理解してくれない経営者がいるのも事実です。

そのようなときに弁護士が選択するのは、依頼者の意思に基づいて自分が納得できない争い方をしてしまうのか、それとも、代理人の就任を断るかです。事務所の経営を考えると依頼を断るのは勇気のいることですが、いくら説得しても法に基づいた対応をしてくれないのであれば、その依頼を断るのも弁護士の矜持です。

弁護士法1条には、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と規定されています。たとえ使用者側から相談を受けていたとしても、労働者の基本的権利を侵害することが明らかな依頼を受けるのは、この使命を果たすことにならないということは、弁護士の側も自覚しておくべきです。

このように、弁護士の所に持ち込まれる労働事件は、経営側負け筋の事件が多い訳ですが、同じ負け筋の事件でも0対100で負けるのか、20対80で負けるのかではダメージが全く違います。そこで、経営側の代理人となったときには、うまく負けるのも弁護士の腕だということは是非ご理解いただきたいところです。

次回の労働事件コラム~未払い賃金請求について

次回のコラムは、労働事件のなかでも、これから事件の増加が予想されている残業代などの未払賃金請求について解説したいと思います。

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