コラム

2013-08-06

【勝手に解説番外編】裁判官はどうやって判決の結論に至るのか 2

前回のコラムでは、実際に起こった事件の概略をお話しいたしました。今回のコラムでは、この事件をもとに、裁判官がどのように考えて判決を出すのかをマスダの分析を交えてお話しいたします。

どうして敗訴になったのか

今回の事件で、地裁の裁判官は、本人尋問のために裁判所に出頭した被告に対して
 「大変お気の毒ですが…。」
と言いながら原告勝訴の結論を出してしまいました。
裁判官は被告にお金が渡っていないことは承知していて、それなのに被告にお金を払わせるのは気の毒だが、『法的に考えた結果はこうなってしまう』と考え、原告勝訴という判決をしたのだと思います。

裁判官が健全な常識に照らして、被告に払わせるのが気の毒だと思うなら、その結論を回避する法律構成はないだろうかとまず考え、そのような法律構成がどうしても成り立たない場合に初めて原告勝訴という結論になるべきです。

率直な印象として、原告の主張・立証の不十分さ、そして明らかになった事実からいっても被告を勝たせるのは簡単な事件でした。裁判官がそれをしなかった理由があるとすれば、事件の全体像を見ずに、法的に原告の主張を勝たせる法律構成がありそうだという自分の思い込みだけで判決に至ったからに他ならないと思っています。

この事件では、もう一つ驚くべき経験をしました。
裁判所の法廷で、裁判官が原告本人尋問をしているときに、原告の手持ち証拠を示すのに裁判官から私に対して、「原告の証拠を示してくれませんか」と言われたのです。

通常そのようなことは、裁判所事務官か記録をとっている書記官が行うもので、反対尋問に備えて集中して話を聞いている相手方の代理人にそのようなことを頼むというのは前代未聞のことでした。
プライドの高い弁護士であれば「冗談じゃない!」と怒るところですが、私は温厚なので黙って従いました。その意味でも、かなり感覚の違う裁判官に当たってしまったと思っています。

良き法律家とは

法律は最低限の道徳という言葉があります。これは、刑事法に言われることですが、民事の法規範も、社会に生起する法的紛争を合理的に解決するために制定されているのですから、結論は常識的に納得できるものであるはずなのです。

イギリスには、法律を杓子定規に主張する法律家を揶揄して「良き法律家は悪しき隣人」という諺がありますが、私は、良き法律家は常識をわきまえた良き隣人でなければならないと思っています。

その意味でも、最終的に当事者の人生を左右するかもしれない判断をする裁判官であればなおさら、もう少し常識的な思考を身につけて欲しいと切に願うばかりです。

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