コラム

2013-08-13

痴漢でっちあげ事件と痴漢冤罪事件~真実を貫き通すのが難しいこともある

最近は、通勤時間等混み合う時間帯に「女性専用車両」を導入する公共交通機関も増えてきました。混み合ったバスや電車内では、両手で手すりやつり革をつかみ、痴漢と間違えられないようにしているという男性の話を聞いたこともあります。

痴漢でっちあげ事件~重い刑罰はやむなし

以前読んだ新聞記事に痴漢被害をでっち上げた事件がありました。
主犯の男とともに痴漢被害をでっちあげたとして、虚偽告訴などの罪に問われた女性に対し、検察側が懲役4年を求刑したというものです。

検察側が懲役4年を求刑するということは、法曹関係者であれば、「実刑判決」を求めるという趣旨だと理解します。

なぜかというと、法律上、執行猶予判決は懲役又は禁錮3年以下の刑にしかつけられないことと、裁判所が執行猶予判決をする場合には、求刑で求められた刑期自体は維持した上で、その刑の執行を○年間猶予するという判決になるのが一般的だからです。

懲役4年の求刑に対して執行猶予判決をするためには、4年の求刑を3年に下げたうえで、更にこれに執行猶予を付けるということになるので、判決をする裁判官にもかなりの心理的な抵抗があることになるため、検察官が『懲役3年を超える求刑をしたときには実刑を求める意思』だと理解することになるのです。

この痴漢でっち上げは、虚偽の告訴をしてその男性を犯罪者にすることを目的としている訳ではなく、本当の目的は、「男性から示談金名目で金をせしめること」にある訳ですから、警察機関を悪用した恐喝といっても良いような事件です。

その意味では、重たい刑罰もやむを得ないところでしょう。

痴漢冤罪事件~被疑者が真実を貫き通すことは難しい

ところで、私も、痴漢事件で被告人の弁護をしたこともあります。

多くの痴漢冤罪事件の被害者は、上記の事件の女性被告人のように被害をでっちあげるのではなく、実際に被害に遭っているのだと思います。
そのため、加害者を許せないという気持ちが強くなって、「この人が加害者だ!」」と思った男性に対して強い処罰感情を持ちます。

でも、もしかしたらそれは、「人違い」かもしれないのです。

自分が加害者と名指しした相手が「人違いである可能性があると思ってもらう」ことは、難しいことです。

たまたま、その女性の隣に立っていただけなのに、「痴漢!」といわれてしまった時に、どのように対応するのか、それは非常に難しい問題です。「それでもボクはやってない」という痴漢冤罪事件を取り上げた映画がありましたが、世間の多くが被害者の味方になって非難する中、真実を貫き通すことはとても難しいことです。

そのようなときの弁護人の活動は、真実を解明することもさることながら、捕まってしまった被疑者を励まして、否認(容疑を認めないこと)を維持することに重きを置くことになります。
客観的な証拠が乏しい事件になると、警察は自白を引き出すためにいろいろな心理的プレッシャーをかけ続けるからです。

このように、被告人が否認をしている事件における捜査段階の弁護活動は、『事実と異なる供述調書が作られないようにすることが重要』なのですが、他にも多くの事件を抱えている中で、毎日のように被疑者に会いに行って励まし続けるのは、とても大変なことです。

外国の刑事事件に関して、弁護人に対する報酬で著名人が多額の支払いをしたという報道がなされることがありますが、残念ながら、我が国では、刑事事件に対する報酬、特に国選事件の報酬はとても低いレベルにあります。

限られた国家予算の中ですし、「どうして悪いことをした人の為に国が弁護人を付けてその費用を出す必要があるの?」という疑問を持つ人が多いことも承知していますが、本当に罪を犯した人も適正な処罰を受けるためには弁護人が必要ですし、まして、『罪を犯していない人が無実の罪に落とされることを防ぐ』ためには、「最後の守り手」としての弁護人の存在は必須です。

刑事弁護を担えるのは弁護士だけなので、弁護士もその業務の重要性は十分に自覚していますが、自分の事務所や家庭を維持するためには、相応の報酬も保証されなければ刑事弁護の担い手は報われません。
我が国の司法予算は、先進諸国の中で最低水準にあると言われていますが、国民の基本的人権擁護のための活動に、もう少し予算を割いても良いのではないでしょうか。

************************************
弁護士舛田雅彦に相談してみたい!と思った方は
ご連絡の際「マイベストプロ北海道のサイトを見た」と「マスダ」をご指名ください。
*連絡先はこちら 札幌総合法律事務所011-281-8448

この記事を書いたプロ

札幌総合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 舛田雅彦

北海道札幌市中央区北5条西11丁目17-2 [地図]
TEL:011-281-8448

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
コンサル弁護士マスダ
イメージ

舛田雅彦(マスダマサヒコ)は弁護士と中小企業診断士の資格を取得している、北海道で最初の弁護士です。弁護士としての法律に関する知識と、中小企業診断士としての...

事務所紹介
イメージ

マスダが所属する札幌総合法律事務所についてご紹介いたします。2001(平成13)年10月に設立した、札幌総合法律事務所はチームワークとフットワークをテーマに、皆様...

 
このプロの紹介記事
札幌総合法律事務所 舛田雅彦

中小企業診断士の資格を持つ“コンサル弁護士”が経営者の孤独に向き合います(1/3)

 弁護士は、トラブルが起きた時に頼るべき専門家、つまり平穏な日常からは遠い存在だと感じていませんか?札幌総合法律事務所のパートナー弁護士、舛田雅彦さんは自身でも「弁護士の世話にならないほうが幸せ」と口にしていた時期があったと言います。しかし...

舛田雅彦プロに相談してみよう!

北海道テレビ放送 マイベストプロ

北海道で最初の「中小企業診断士資格を持つ弁護士」です

会社名 : 札幌総合法律事務所
住所 : 北海道札幌市中央区北5条西11丁目17-2 [地図]
TEL : 011-281-8448

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

011-281-8448

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

舛田雅彦(ますだまさひこ)

札幌総合法律事務所

アクセスマップ

プロのおすすめコラム
相続人複数の場合に一部の相続人が同意しないと被相続人の預金は引き出せないの?

遺産分割のトラブルで良くあるパターンは、多くの良識的な相続人は別に特別な分け方を希望していないのに、一人だ...

[ マスダの解説~実際の事件から ]

あなたの契約書の「契約解除条項」は大丈夫ですか?(1)

仕事柄、顧問先等から契約書の内容のチェックを求められることが少なくありません。今回のコラムでは「契約書」...

[ ビジネス・経営 ]

賃貸居室内の自殺によって発生する家主の損害(1)

テレビのニュースを見ていたら、自分が保証人になっていた家族が賃貸住宅で自殺した直後に家主から多額の損害賠償...

[ マスダの解説~実際の事件から ]

弁護士費用のお話し(1)~弁護士に事件を依頼したらどのくらい費用がかかるのか

皆さんは、弁護士に事件を依頼するといくら支払わなければならないか、おそらく感覚的に理解することは難しいと思...

[ 弁護士業界勝手に解説 ]

倒産会社代表者の想い~万策尽きる前に対応を
イメージ

自分が経営していた会社が倒産することは、自分の収入の道を断たれることはもちろんですが、従業員を路頭に迷わせ...

[ ビジネス・経営 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ