コラム

2013-09-10

裁判員と死刑制度(1)

最近では裁判員裁判は日常的に行われているので、単に裁判員裁判が行われているというだけではニュースにもならなくなっていますが、それでも、死刑の可能性があるような重大事件の場合には、当然マスコミも報道するし、社会の関心も高くなります。

そのような報道の中で、「裁判員に死刑の判断をさせることが相当か」という議論がなされることもあるので、今回は死刑制度を中心に裁判員裁判を考えてみたいと思います。

なお、私自身は、裁判員制度については、賛成の立場ですが、その理由は以下のような考えからです。

健全な社会人の常識を反映するために

これまでの刑事裁判は、司法試験合格後、司法修習を経て直ぐに判事補になって、その後は裁判官としてのキャリアしか持たない人たちが、事実認定から量刑(どのような刑にするか)も含め全て決めていました。

そして、多くの裁判官は、自らが犯罪の現場に直接立ち会うことはありませんので
・警察や検察官が作成した証拠書類
・裁判所に呼び出した証人、被告人自身の話
をもとに事実認定をするのですが、そこには、自らの体験に基づいた判断があるわけではありません。

裁判官は法律のプロではあっても、事実認定については一般の市民と異なる素養を持っている訳ではありません。事件を数多く経験しているという意味で、裁判における事実認定に『慣れている』ということはありますが、この『慣れ』という点については、マイナスの面も少なくありません。

特に、日本の裁判のように、有罪率が90%を大きく超えるような状況であれば、裁判官が『有罪を前提に事件を見るようになる』のも仕方のないことで、そこに刑事手続の大前提である「無罪の推定」(「疑わしきは被告人の利益に」という原則)はなく、無罪判決を勝ち取るためには、弁護側が無罪の立証をしなければならないという現実(「疑わしきは有罪」という現実)があります。

そのような、有罪の推定のもとで判断をするプロの裁判官ではなく、事実認定に『健全な社会人の常識を反映してもらいたい』という趣旨で導入されたのが裁判員制度です。

自分が裁判員になったら「死刑判決」を下せるのか?

裁判員制度に関する街頭インタビューの回答を見ていると、
「自分が死刑判決をするのは嫌だ」
という答えがかなり多くの人から返ってきます。その感情はほとんどの人にとっても同様だと思いますし、私も死刑判決をするのは嫌です。

しかし、自分が死刑判決をするのは嫌なのに、凶悪事件が起きると、直ぐに「死刑にすべきだ」という声が多くなるという現実もあります。

私は、死刑判決について、自らが裁判員になったとしても死刑判決を下すだろうという強い気持ちを持てないのであれば、「犯人を死刑にしろ」などと発言するのは慎むべきだと思っています。

多くの良識ある人が、自分は「死刑」の結論を下せないということを自覚するならば、死刑制度の存続自体についても、より深く議論されることになるべきだと思うのですが、残念ながら、我が国でその議論が深まる様子はありません。

皆さんは、それでも死刑が必要だと思いますか?

死刑制度の矛盾点については、次回のコラムで詳しく述べたいと思います。

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