コラム

2013-10-29

名経営者の末路~オリンパスの経営陣はなぜ損失隠しを行ったのか

オリンパスの多額の損失隠しの事件では、現・旧経営陣に対して、高額の損害賠償請求が国内外で提起されています。

この事件で明るみに出た多額の損失隠しは、上場廃止に至っても仕方ないほどの不祥事であり、相応の損害賠償を求められるということ自体は否定できないことだと思います。

なぜ名経営者が損失隠しを行ったのか

今回話題にしたいのは、損害賠償請求事件のことよりも損失隠しの首謀者とも言われている菊川元社長のことです。菊川氏は、本件が発覚するまでは
『オリンパスの内視鏡事業を世界の圧倒的なトップシェアに押し上げた名経営者』
と評価されていました。

その背後でこれほどの多額の損失隠しをしていたことは残念なことではありますが、おそらく菊川氏個人がそのことで個人的な利益を得たことはないでしょう。

菊川氏自身は、多額の損失が表面化しないうちに財務諸表が健全化されるよう腐心していたのであり、そのことが、経営陣の責任という問題を離れても、オリンパスという会社自体にとって「最善の対応策」だと信じて損失隠しに走ったのでしょう。

ステークホルダーの利益

しかし、そこには、企業を取り巻く多様な「ステークホルダーの利益」という視点が欠けていました。

企業は社会的な存在であり、一企業の中の理屈だけで運営して良い時代ではないという基本的な認識を疎かにしていたのではないかという気がします。(もしくは分かってはいたけど、優先順位として企業の利益を選択したということだと思います。)

株式公開企業である以上、対外的に公表する財務諸表の適正さを欠いていては、適正な株の取引をすることはできませんし、結果として日本の株式市場全体に対する信用を棄損することになり、その影響は計り知れないということに早く気付くべきでした。

ルールを守ることが出来なかった代償は大きい

この事件は、ウッドフォード氏という外国人の元社長が関与することで表面化したのですが、そのような損失隠しの例は他社にも数多くあり、氷山の一角ではないかという報道もなされています。

仮に、多額の損失が生じた時点でそのことを公表していたとしたら、会社の信用が一時的に大きく低下するというマイナスはあるものの、少なくとも取締役の責任については、「経営判断の原則」により、法的責任を回避できた可能性は十分にあります。
(社内的に辞任等の形で責任をとる必要はあるでしょうが、損害賠償責任は負わなかった可能性があるという意味です。)

それが、ここまで事態が進行してしまうと、民事上の損害賠償責任に留まらず、金融商品取引法違反で刑事被告人として重い処罰を受ける可能性もある訳ですから、名経営者の末路としてはあまりにも哀れです。

世間ではコンプライアンスに対する認識が高まり、私もコンプライアンスに関する研修の講師を頼まれることは少なくありませんが、研修以前の「ルールを守る」という当たり前のことができなかったことの代償は、あまりに大きなものになってしまいました。

私たちも、晩節を汚すことの無いよう、正々堂々と日々の業務を行っていきたいものです。

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