コラム

 公開日: 2014-02-04  最終更新日: 2014-09-19

文化財保護と企業の社会貢献活動

崩壊の危機に直面しているイタリアの古代ローマ遺跡コロッセオの修復費用約2500万ユーロ(24億5千万円)の全額を、文化活動の支援に積極的な同国の高級靴ブランド「TOD’S(トッズ)」グループが負担するという申し出に対して、消費者団体が異議を述べた。ということがありました。
(結局、ローマ市はこの異議を退け、2012年12月から修復工事が開始されています。)

異議の理由は、契約のなかにトッズが「コロッセオの画像を15年間商業利用できる権利が含まれている」からということですが、それが多くの国民の歴史遺跡に対する感情に反するということなのかもしれません。

文化財の商業利用~国民の理解、企業経営者の責任

日本でも、国内初の代表的な近代建築として知られる鎌倉市の神奈川県立近代美術館が県の財政難のため、敷地の所有者である鶴岡八幡宮との土地貸借契約を更新しない方針とし、2016年3月末で閉館の見通しとなっているなど、国内外問わず、公共施設の維持費の問題は各自治体も頭を悩ませており、公共施設の維持費を提供する代わりにその施設に特別な権利を与えられるという契約は最近では多く用いられるようになっています。

プロ野球の球場や、公共ホール、体育館などのネーミングライツ(命名権)を民間企業に販売する手法などが有名ですが、冒頭のコロッセオの件に関しては、命名権を与える訳でもなく、画像を商業利用するといっても、排他的に利用できる権利であればともかく、他人の権利を制限しない形であれば、多額の補修費を支払ってもらう見返りとしては不当とはいえないのではないかというのが個人的な感想です。

企業経営者も、収益を上げて事業を維持発展させる責任がある訳ですから、いかに世界的な遺跡を保護するためとはいえ、経営的に価値のある資金提供でなければ株主や従業員らステークホルダーの理解が得られません。

最悪の場合には株主代表訴訟等の法的責任を負わなければならないこともあり得ることなので、企業経営にどれだけのプラスの効果をもたらすのかということを合理的に説明できなければ、経営者としては苦しい立場になります。

見返りなしに資金を出すだけでも、国民の資金提供企業に対する好感度の向上など、一定の効果は期待できるでしょうが、多額の資金を提供する見返りとしてこの程度では不足と考える関係者は少なくないでしょう。

企業は社会に価値を提供することで見返りとして利益を上げるという活動を継続しているので、社会からいただいた収益の一部を還元する意味で文化財保護のような活動を行うということは意味のあることですが、それも企業経営との兼ね合いで行う必要があります。企業の果たすべき社会的責任(CSR)のなかでも、社会貢献的活動の場合には特に、企業経営の一環としてその効果を踏まえて実施について判断される必要があります。

その活動が企業価値を高める方向で作用すればよいのですが、今回のように社会から反発を受けるようなことであれば、逆効果になるということもあります。いかに善意から出た行動であっても、企業活動にマイナスの影響しか与えないものであれば控えざるを得ないということもあります。

しかし、一方で、保護しなければ倒壊の危機のある文化財に対して、公共の予算を割けないときに民間から資金を提供してくれるという奇特な企業があるのであれば、市民の側も冷静になってその利害得失を見極める必要があるのではないかという気がします。

貴重な文化財が倒壊してしまえば、元も子もないということはおそらく共通認識のはずですから、感情的な反発だけで反対するのは疑問です。

いろいろな社会運動がありますが、動機が正しければすべて評価されるという訳ではありません。どんな行いも社会全体のバランスの中に納まって初めて存在価値が認められるのだということを考えて行動したいものです。

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