コラム

2014-04-30

弁護士の不祥事と懲戒

今日は残念な内容のことを書いてみることにします。

弁護士の横領事件に関する報道がここ数年目立つようになってきました。

札幌でも以前、札幌弁護士会に所属していた元弁護士が業務上横領で起訴されたということがありました。この事件が報道された時点で「元弁護士」とされていたのは、この弁護士が当時『既に弁護士資格を失っている』からです。

札幌弁護士会では、この元弁護士の横領の事実を彼が自首する前年の夏ごろの時点で把握しており、弁護士会として懲戒請求をしていました。通常、懲戒請求をされると、弁護士は所属している弁護士会から退会することができません。弁護士会の懲戒権が所属弁護士にしか及ばないため、退会されてしまうと懲戒手続が続けられなくなるからです。

そのため、懲戒手続とは関係ない引っ越しなどの理由で他の弁護士会に登録替えしようと思っていても、懲戒請求を受けてしまうと、その懲戒手続が終わるまで登録替えが認められないので、弁護士にとっては非常に困ったことになってしまいます。

「弁護士が懲戒請求を受けるのは、『何か不正を行ったから』なのだから仕方ないではないか。」と思われるかもしれませんが、懲戒請求の中には、事件を有利に進めるために相手方弁護士に対する嫌がらせ目的で行われるものもありますし、事件の結論が自分の思い通りにならなかったことに対して、不満のぶつけ先として依頼していた弁護士が犠牲になることもあります。

弁護士は他人の紛争に関わる職業なので、ある程度経験を積む中で恨みを買うこともあるため、中堅以上になれば、懲戒請求を受けたことがないという弁護士の方が少ないくらいでしょう。

懲戒請求の手続

懲戒請求を受けると、弁護士会は慎重に審査を行います。
手続としては、綱紀委員会という委員会で審査をして、懲戒相当か不相当かの結論を出した後、懲戒相当であれば懲戒委員会で事件を再審査して、懲戒にするか否かと懲戒の程度について議決するのです。

その手続は、到底通りそうもない懲戒請求の場合でも同様で、綱紀委員会で懲戒不相当の結論が出たときには、申立人は日弁連に不服申し立てをすることができ、日弁連の綱紀委員会が懲戒不相当とすると、これに対して綱紀審査会に綱紀審査の申立をすることができることになるので、懲戒請求をされてからこれらの手続が全て終わるまでは、弁護士は退会することができないのが原則なのです。

「元弁護士」の懲戒処分はどうなったのか

冒頭で述べた札幌弁護士会の元弁護士に対する弁護士会の懲戒手続は、結論が出ないまま既に終了しています。どうしてかというと、この元弁護士が自己破産の申立をして破産宣告を受けたために、自動的に弁護士資格を喪失したからです。

弁護士法7条は「次に掲げる者は、第4条、第5条及び前条の規定にかかわらず、弁護士となる資格を有しない。」として以下のとおり規定しています。
 (1) 禁錮以上の刑に処せられた者
 (2) 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
 (3) 懲戒の処分により、弁護士若しくは外国法事務弁護士であって除名され、弁理士であって業務を禁止され、公認会計士であって登録を抹消され、税理士であって業務を禁止され、又は公務員であって免職され、その処分を受けた日から三年を経過しない者
 (4) 成年被後見人又は被保佐人
 (5) 破産者であって復権を得ない者

おそらく、懲戒手続がそのまま進行していれば、「退会命令」という最も重い処分が下されたと思いますが、その前に弁護士資格を失っていたために懲戒処分はされなかったということなのです。

もし破産者が免責決定を受けたら弁護士に戻ることは可能か?

前述の弁護士法の規定を見ると、破産者でも「復権」すれば弁護士になれるということになります。「復権」というのは、破産者として制限を受ける各種の公的権利や職業上の制限から回復するということですが、破産法では、破産宣告の後に免責の決定が確定すると当然に「復権」することになります。そうすると、そのときに弁護士資格も自動的に回復するのではないかと思われるかもしれませんが、日本の場合、弁護士会は強制加入団体なので、どこかの弁護士会に所属しない限り弁護士業務をすることはできません。

仮に、この元弁護士がどこかの別の弁護士会に入会申請をしたとしても、その不祥事の内容を勘案すると、よほどのことがない限り入会を認める弁護士会はないと思われるので、復権したとしても弁護士業務をすることはできないということになってしまいます。

高度の倫理性を求められる職業~弁護士

弁護士は、職務上他人の財産を預かることも少なくないため、厳しく身を律していなければ、簡単に不正ができてしまう立場にあります。また、高度の倫理性を求められる職業である以上、不祥事があったときには一介の弁護士に過ぎなくてもマスコミに報道される立場でもあります。

弁護士は自由業と言われることもありますが、ほとんどの弁護士は、司法修習中から弁護士倫理を叩き込まれ、自分の職業がこのような厳しいものであるという自覚のもとで日々仕事をしています。

このような事件が起こると、多くの弁護士が地道に築き上げてきた弁護士に対する信頼はあっという間に揺らいでしまいますが、私たちは揺らいでしまった信頼を取り戻すための努力を続けるしかないのです。

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