コラム

 公開日: 2014-05-13  最終更新日: 2014-09-19

平成27年1月以降適用される相続税制改正とは?

インターネットで「遺産相続」と検索すると、一番ヒットする専門家は弁護士ではなく行政書士の人たちです。そうすると、一般の人は、行政書士が相続問題の専門家のように思うかもしれませんが、行政書士が相続問題を広く扱えるということではありません。

相続が発生したら・・・誰に相談するべき?

例えば、相続人間のトラブルに行政書士が関与するようなことがあれば、弁護士以外の人が他人の法律事務に関与することを禁じている弁護士法72条違反になりますから、行政書士の人たちが相続問題に関与できるとしてもその関与の形は限定的で、合法的にできるのは、遺言書の作成に関するアドバイス程度ではないかと思います。(この点は、立場によって見解が分かれるところなので、私の考えを述べています。)

弁護士法72条では次のように規定しています。
「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」

また、この規定に違反する行為は犯罪とされており、「2年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」(同法77条)に処せられます。

また、最近は、相続税の問題に絡んで、税理士の人たちが相続問題を業務分野として開拓しようとしています。電子申告の普及などにより税務申告が個人でもできるようになったことで、税理士にとっても新たな業務分野の確保は切実な問題になっているからです。

そんなこともあって、最近では、相続人間の争いの場面に税理士が顔を出すことが少なくないのですが、これも、弁護士法違反に該当する可能性が高いので、意識のある弁護士は、税理士が一方当事者の代理人のような行動をとったときには、その税理士は相手にしないというような対応をします。

一方で、弁護士の業務範囲については、「弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。」(弁護士法3条2項)と規定されているほか、行政書士、司法書士業務もできるとされているため、オールマイティーな資格ではあるのですが、資格の上でできるということと実際に業務の細部にまで精通していることとは異なりますから、ほとんどの弁護士はこれまで税務に関する相談があっても、「税理士さんに相談した方が良いです。」と答えることが多かったと思います。

とはいっても、相続事件の相談を受けたときには、相続人の方たちはみなさん税金のことを気にしているので、相続税の基本的なことは知っておく必要がありますし、相続税の基礎控除の話などは当然に回答できないと恥ずかしい類の税務問題です。

相続税~基礎控除額の計算(平成26年12月31まで)

一般の方でも、ご自分が相続の当事者になったことがないと、遺産相続すれば相続税がかかると単純に思っている方が多いのですが、相続税には基礎控除という課税最低ラインがあるので、その基礎控除額を下回る相続財産しかなければ、そもそも相続税がかからないということになります。

基礎控除額は5000万円+1000万×法定相続人の数なので、例えばご主人が亡くなって妻と2人のお子さんがいた場合には相続人が3名なので、相続財産額が8000万円までは相続税がかからないことになります。また、これ以上に相続財産がある場合でも、配偶者には相続税の軽減措置があり、相続財産が法定相続分か1億6000万円のいずれかを下回っていれば相続税はかかりません。

ほかに、細かな控除や控除を受けるためのルールはあるのですが、弁護士でも、この程度の相続税の知識は持っている必要があります。

基礎控除額の計算が変わる(平成27年1月1日以降)

平成25年3月29日に、平成25年度税制改正に関する法律「所得税法等の一部を改正する法律」が可決、成立しました。この法律の相続税に関する改正部分の施行は平成27年1月1日からです。

さてそれでは具体的には何が変わるのでしょうか?
①相続税の基礎控除の「3000万円+600万円×法定相続人の数」への引き下げ
②2億円を超える課税財産に対する相続税率の引き上げ
3億円以下の税率 変更前:40% 変更後:45%
6億円以下の税率 変更前:50%(3億円超は50%) 変更後:50%
6億円超の税率  変更前:50%(3億円超は50%) 変更後:55%

先ほどの妻と子供2人が相続人の例でいうと、基礎控除額が8000万円から4800万円と大幅に減らされることになるので、法改正によって相続税を支払うことになる相続人は、かなり増えることが予想されます。

マスダが考える「相続税の改正案」

この基礎控除額の引き下げは、相続財産のかなりの部分を占める不動産の価格が値下がりしていることから、現行の基礎控除額では、本来相続税を支払ってもらう対象として想定していた層からも税収が得られないということがあったという実質的な理由があるのですが、個人的にはここまで基礎控除を削減するのはいかがなものかと思っているところです。

それよりも、相続税の最高税率をもっと上げて、例えば10億円以上の相続財産を相続した場合には8割くらいの相続税を支払ってもらうというようにしたらどうかと思っています。(この税率は現実には難しいでしょうが…。)

そうすると、どうなるかというと、税収増になることもありますが、何代にもわたって多額の資産を承継することができなくなるので、富の偏在の恒久化が防げることになります。

資産家は、金銭面以外にも教育や人脈といった相続税のかからない資源を子弟に承継することができるので、それだけでも普通の家庭に生まれた人たちとはスタートラインから違った立場にあるのですから、それに加えて破格の相続財産を承継させる必要はないであろうというのが私の考えです。

仲間内でこの話をすると、そのようなことをすれば、中小企業の事業承継ができなくなるなどの批判はあるのですが、事業承継を円滑に進める必要があるときには、事業承継する相続人に対する納税猶予措置など別の手当てをすれば良いと思っています。

相続税率を上げるもう一つの目的は、亡くなる方が生前にお金を貯め込むのではなく、自分や子孫のために消費することを促すということです。経済の停滞は、市中にお金が回らないから起こる現象なので、金持ちの人たちが、相続税で持って行かれるのを嫌って貯蓄から消費にお金を回すようになれば、経済が活性化されて、人々のやる気が出てくるという好循環が生まれます。

こんな税制を考える政党が現れないかと期待しているのですが、影響力のある政治家自身がかなりの資産家であることが多いので、このような提案が実現するのは容易なことではありません。でも、私は、誰か本気で取り上げてくれないだろうかと、本当に思っているのです。
皆さんはどう思いますか?

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