コラム

 公開日: 2015-01-13 

意思決定のスピードとリスクテイク

意思決定をその場で行う台湾企業・時間を費やす日本企業

あるテレビ番組で、急成長を遂げている台湾企業と日本企業の意思決定の速さの違いが紹介されていました。台湾企業の場合には、打ち合わせの現場に意思決定の責任者が同席しているので、その場で提案の採否が決定されるけれども、多くの日本企業の場合には、一旦上層部にお伺いを立てて、それから採否を決定するので、製品化のスピードに遅れ、市場に投入するタイミングを失してしまうというようなことが紹介されていました。

平成25年度の大河ドラマ「八重の桜」の中で、幕末の第二次長州征伐講和の使者として指名された勝海舟が、各藩の代表者による合議制の国家運営を主張したのに対して、徳川慶喜はその要求を一旦飲んだと見せかけて、その約束を反古にしてしまったという場面がありました。それまでの幕府の運営は、良くも悪くも将軍の一存で事を進めることができたのが、合議制による国家運営になると、多くの立場の意見を反映させることはできるものの、意思決定は確実に遅くなります。民主主義は、多くの民意を反映することができるという利点がある反面、意思決定に多くの時間を費やさなければならないという難点も含んでいるのです。

組織が小さなうちは、トップが事業の全体を見渡せるし、権限もトップに集中しているので、即断即決のトップダウンで物事を決することができるという利点があります。一人にすべての権限が集中するということは、判断ミスのリスクも孕んではいますが、失敗したとしても失うものも小さいので、タイミングを失するリスクと判断ミスのリスクを秤にかけて、即断即決で事を進め、うまく時流に乗ることができれば飛躍的に事業を伸ばすことが可能になります。

一方、成熟した企業の場合には、組織が大きくなりすぎてトップが事業の全体の把握をするのも難しくなりますし、利害関係者も多くなって意見を聞かなければならない相手も増え、どうしても意思決定は遅くなります。船頭多くして船山に上るといいますが、船が山に上るどころか、だれも責任を取って舵を切ろうとしないので、大海原で漂流してしまうという事態も起こり得ることです。

日産のカルロス・ゴーン氏のように、組織が危機的状況になって全権を委任されたようなトップであれば、果断に改革ができますが、それとても、日産が、改革をしなければ衰退する以外にないところまで追い込まれたからできたことであり(この状況では、何かをやって失敗したとしても、その失敗のリスクは何もしないリスクよりは小さいという状況だったということです。)、いわゆる平時にあのような決断ができたかどうかは未知数です。


日本の政治に見る意思決定

これまでの我が国の政治状況でも、利害関係者が多すぎてそれぞれの意見を聞いてことを進めようとした結果何もできなかったというのが民主党政権の一番の難点でした。これは寄せ集めと揶揄されてもしょうがないようなその政党の成り立ちからある程度予想されたことではありますが、本来であれば、政党のトップになった人が多少の内部からの批判を押さえつけてでもリーダーシップを発揮して事を進めることが必要だったし、野田前首相はそれをやろうとしたのだと思いますが、時すでに遅く解散に追い込まれてしまいました。

政権交代して世論の支持も厚い安倍首相は、国民の圧倒的な支持という追い風を背景に、党内の反対派を押さえつけて、様々な改革を推し進めようとしています。今の状況は、これまでの何も決められなかった政治に苛立っていた多くの国民には好感をもって受け入れられていますが、そこで考えなければならないのは、私たちは安倍政権に今後の我が国のかじ取りを白紙委任した訳ではないということです。

これまでは何も決められなかったことがリスクでしたが、これからは、改革の舵取りを誤れば、この国が財政破たんしてしまうかもしれないというとても大きなリスクも孕んでいるということを忘れてはいけません。安倍首相がやろうとしていることは、首相のかねてからの主張ですから、拙速に意思決定されたわけではありませんが、その安倍首相を支持している私たちが、政権の行方について安易に判断しすぎていないかというのが気になるところです。


弁護士にもリスクを取って素早い決断を迫られる時がある

実は、絶対にミスが許されないと思われている私たち弁護士の仕事ですが、ときには、拙速でも良いから手を打っておく必要があるということもあります。時効の完成を止めるために、内容が完全に把握できないままでも請求の内容証明郵便を送っておく必要がある場合とか、現に脅迫や暴行等の加害行為が繰り返されていると依頼者が助けを求めに来たときに、そのような事実の確証がないからといって、警告をすることを躊躇することもできません。建築紛争のように、既成事実を作られてしまうと後から回復するのが難しいような事案であれば、最終的な判断が下るまで、建築差し止めという手段を取る必要もあります。

そういう意味で、内容を確実に証明できるという確信がつかめなければ何もできないようでは、弁護士の仕事は務まりません。こちらの出した通知の内容が後で誤っていたと分かったときには、後から謝罪して訂正する必要が生じることもありますが、そのことでこちらが多少プライドに傷がつくのと、行動しないで取り返しのつかない失策を犯すのとではリスクの大きさが全く違うのです。

意思決定の速度とリスクテイクは、微妙なバランスの上で均衡していなければなりませんが、最近の社会の風潮を見ていると、リスクを取ろうとしない人が多すぎるような気がしてなりません。もちろん無謀なリスクは避けなければなりませんが、わずかなもの(特に「自分のちっぽけなプライド」のようなもの)を失うのを恐れて、大きなチャンスを取りに行く決断ができずに時間を無為に過ごしてしまうというようなことは、後で後悔しても取り返しがつきません。

若くて失うものが少ないうちは、多くのことにチャレンジするべきです。そのチャレンジが成功すれば良いし、たとえ失敗したとしても、その中から学ぶことが将来必ず役立つことがあるでしょう。
最近は、歳のせいかそんなことも考えるようになりました。

皆さんは、最近『リスクを取る決断』をしたことがありますか?


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