コラム

 公開日: 2013-06-05  最終更新日: 2014-09-19

債務整理のお話し(2)~弁護士業界が潤った?!過払いバブルを経験した弁護士のホンネ

今回のコラムでは、債務整理のお話しの第2回として、弁護士業界に起こった「過払いバブル」のお話をしたいと思います。
前回までのお話しはこちら

過払い金の回収と弁護士報酬

「バブル」というのは言うまでもなく、泡のように一過性に膨らんだ状況を指す訳ですが、今から20年ほど前の日本経済を「バブル経済」といったのと同じように、実態を伴わない収益がもたらされた時期ということもできます。

実体を伴わない収益といっても、前回の債務整理事件の歴史のところで解説したように、最高裁判所の判例が確立する前は、債務者側の代理人は大変な苦労をして貸金業者側と戦っていた訳で、貸金業者から過払金を取り返すための努力に見合う報酬もそれなりのものをいただく必要があったというのは理解できるところです。

私も計算上過払金が生じた際に、業者側の様々な反論と戦いながら過払金を回収したという経過があったので、過払金が発生した時には回収額の2割相当を過払い回収の報酬としていただきますという約束で受任しています。

その他に、債務整理事件については、着手金として3万円をお支払いいただいているのですが、過払金が確実に回収できそうな事案であれば、着手金はその過払金の中から支払ってもらうということで受任することもあります。

依頼者にとっては、多額の債務残高を抱えて返済できない状況で弁護士のところに相談に来られる訳ですから、その返済の義務がなくなるだけでも万々歳で、それに加えて過払金が返って来るなら2割くらいの過払い報酬を支払うことに不満を持つ人はいません。(私の契約は、札幌の弁護士の平均的なところではないかと思っていますが、東京の弁護士事務所は、これに加えて「減額報酬」なるものを請求することもあります。報酬の地域差の問題は別に改めて解説したいと思っています。)

そして、過払請求事件は、受任通知の発送、開示された取引履歴に基づく利息計算、計算によって出た過払金の請求というのが一般的な流れで、いずれも書面でのやり取りになるので、弁護士が自分で書面の作成をしなくてもできてしまう(当然最終チェックは弁護士が行いますが)ところがあり、それがバブルを生むことに繋がってしまったという面は否定できないところです。

長引く不況~過払いバブル時代の背景

平成15年ころ以降、多重債務が社会問題化してきて、その解決のために弁護士に相談するということが次第に認知されるようになりましたが、過払金が返ってくるということが一般的に知られるようになるのはまだ先です。私も、このころ受任した債務整理事件は自己破産や個人再生といった裁判所の手続を利用して解決した案件の方が多いと思います。

それが、平成17年ころから過払金の請求をする事件が増えてきました。
これは、バブル経済崩壊後も何とか支払いを継続してきた多重債務者が長引く不況に耐えきれなくなって弁護士のところに相談に来るようになったという背景もあって、高い利息を支払ってきた期間がかなり長い方が少なくなかったという事情があったように思っています。

そして、債務整理事件で相談に来られる依頼者が飛躍的に増えたことで、全ての手続きを弁護士が行っていては事件処理の遅滞を起こしかねないということもあって、定型的に対処できる事項を事務職員にやってもらって法的な判断が必要な事項に弁護士が関わるという分業化が進むようになりました。

それで、私たちの事務所でも事務職員を増員して大量に受任した事件処理に追われることになったのですが、この時期に売り上げた弁護士報酬の半分以上が債務整理関係によるものといういびつな収入状況になってしまっていました。

加えて事件処理の一部の作業を事務職員が担ってくれますから、弁護士自身にとっては、少ない労力で多額の報酬が手にできる、まさにバブル的な状況が生れてしまった訳です。

過払いバブルの終焉~あの時代を振り返ってみて

この当時から債務整理事件を扱っている多くの弁護士は同様の状況で、通常は法律相談を行っても実際に受任につながるのは3割程度のところが、債務整理では切羽詰まって相談に来る方がほとんどなので100%近い受任率でした。しかも、その中の数件は過払金が回収できて過払い報酬が期待できるということになるのですから、弁護士の懐を相当程度潤したことは間違いのないところです。

しかし、過払金は、過去に延々と高い利息を支払い続けてきた人でなければ回収でませんから、いつまでもそんなおいしい状況が続く訳がありません。それに加えて、東京の法律事務所がテレビCMなどで地方の多重債務者を漁って行ったり、簡易裁判所の代理権を与えられた司法書士が債務整理事件に関与したりしたことで、過払バブルは既に収束してしまった感さえあります。

過払事件を積極的に受任していた事務所では、過払いバブルの時に膨れ上がった事務所の経費を見直し、過剰になった人員の整理を検討しています。過払事件を行うために札幌に支所を出した東京の弁護士法人の撤退も相次いでおり、まさに宴の後の状況になりつつあります。

過払いバブルの前の状況を知っている弁護士にとっては、「昔の状態に戻るだけ」ということもありますが、この間に大量の新人弁護士が業界に入ってきていますから、状況は昔よりも難しくなってきています。

過払いバブルの時期にこの業界に入ってきた若手弁護士にとっては、収入のかなりの部分を占めていた事件類型がスポッと無くなってしまう訳ですから、その不安感もかなりのものがあるような気がします。

おまけに、過払いバブルで一時的に増えた収入も翌年の税金でかなりの部分は持って行かれます。過払いバブルが私たちに残したものは、弁護士の本来業務をきちんと行わなければならないという意識をマヒさせてしまったという負の部分がかなり大きかったような気がしています。

次回債務整理のお話し~弁護士と広告 法律事務所にはテレビCMは必要か

過払いバブルのなかで効率的に収益を上げる目的で一部の法律事務所がマスコミに広告を出して債務整理事件の依頼者を募集しています。
私は、弁護士業務は本来マスコミ広告になじまないと思っているのですが、次回債務整理のお話し(3)は、CMを行っている東京の弁護士と地元の弁護士どちらに頼んだ方が依頼者のためになるのかということも含め、弁護士とマスコミCMのことについてお伝えしたいと思います。

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