コラム

2013-06-06

債務整理のお話し(3)~弁護士とコマーシャル 法律事務所にテレビCMは必要か?

今回は、債務整理のお話しの第3回として、テレビCMを行っている東京の弁護士と地元の弁護士のどちらに頼むのが良いのかということについて考えてみたいと思います。
前回までのお話しはこちら

このように書くと、私自身が地方の弁護士なので、地方の弁護士に頼む方が良いという結論になるのは明らかと思われるかもしれませんが、それがなぜなのかということを理解していただかないと、手前味噌で言っているとしか思えないでしょうから、まずは、東京の債務整理を中心としている事務所の仕事のやり方をご説明しましょう。
※なお、ここからの説明は、私自身が当該事務所の関係者から直接聞いたこともありますが、推測で述べていることもあります。その前提で、お読みください。

札幌に住んでいて、東京の弁護士に依頼できるのか?

テレビCMを利用している多くの事務所は、CMを見た相談者からの電話による問い合わせに対して、事務職員(マニュアルに従って回答するオペレーターのような人たち)がマニュアルに従って所定事項を聞き取って事件を受け付けるという方法を取っています。(以前は受付だけでなく、そのまま郵送で契約書をやり取りして事件の受任までしていました。)

本来、弁護士の仕事は、依頼者ごとに異なる事情をくみ取ってその事情に最も合致した解決方針を提示して事件処理を進めるというプロセスで行う訳ですが、この手の事務所では、事件を類型化して事件処理もパターン化することで、弁護士が最初の方針決定の過程に関与するだけでなく、よほどのトラブルがない限り弁護士が依頼者と直接コンタクトすることなく業務が行われていました。

弁護士法72条は「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」と規定しており、弁護士事務所の事務職員であっても、全く弁護士の関与なく事件の代理行為をした場合には、非弁護士が法律事務を扱うことを禁じている弁護士法の趣旨に反するのではないかという問題が生じました。

特にテレビCMなどで大量に顧客を誘引している事務所の場合、全国から来る事件依頼にいちいち弁護士が対応することは当初から予定していないビジネスモデルなのではないかという疑念は拭えません。

日弁連の対応とその後~義務付けられた面談

そこで、平成23年2月、日弁連は「債務整理事件処理の規律を定める規程」を制定して、弁護士が債務整理事件を受任する場合は、「あらかじめ、当該事件を受任する予定の弁護士が、当該債務者と自ら面談」して、債務の内容や生活状況等を聞き取らなければならないということを会員弁護士に義務づけました。(このような規程が定められたのは、逆に言うとそのようなことをせずに問題になった事例が少なからずあったということを現わしています。)

そこで、CMをやっている東京の事務所はどうしたかというと、札幌もそうですが、全国の主要な都市に支所を設立して、そこに事務所に入所したての新人弁護士を一人置いて、受任のための面談をやらせるということをしました。事務所によっては、面談だけそこにいる弁護士が行って、事件の処理は東京にいる事務職員が行っているという所もあったようです。

最近、地方都市で債務整理の相談会を行うというチラシが配布されているようですが、この日弁連の規程の趣旨をクリアするために面談だけは依頼者の地元で行って、事件を漁って行った後は事務所のあるところで処理するという手法がとられているのです。依頼者にとっては事件委任のときだけでなく、その後も不安に思った時に弁護士が直接面談して対処する地元の弁護士に依頼するほうが安心なのではないでしょうか。

また、この原稿を書くにあたって、テレビCMをしている複数の法律事務所の報酬規定を見てみましたが、札幌の弁護士の標準的な金額よりも高めに設定されており、コスト面でも地元の弁護士に依頼する方が依頼者のためになることが多いといえるでしょう。

マスダが考える法律事務所とテレビCM

私自身は、弁護士の仕事は依頼者の個別の事情に対応するオーダーメイドの業務(債務整理事件のようにある程度パターン化されたものもありますが)なので、テレビCMなどを利用して大量に依頼者を呼び込んで受任するという手法にはそもそもなじまないと思っています。

全国からの大量のニーズにきちんと対応するためには、大規模な事務所にして、全国各地に支所を設立してネットワークを構築しなければなりませんが、経済規模が小さいために法的紛争の価格も低くなりがちな地方では、事件を受任することで得られる弁護士費用の単価も紛争の価格に比例して低くなります。いわゆる過払いバブルがはじけた後では、収入面を考えると、首都圏の法律事務所が地方に多店舗展開するメリットは少ないので、今後はテレビCMの利用も減少していくでしょう。

以前、テレビCMを利用している法律事務所に批判的なコメントをツイッターに投稿したところ、「広告を出している事務所は、それだけきちんと経営しているから広告を出すことができるのではないか。」という反論を受けたことがありました。そんな方には、利益を上げている法律事務所と依頼者のためにきちんと事件に向き合っている法律事務所が必ずしもイコールではないということに気付いていただきたいと思っているところです。

========
3回にわたり解説をしてきました債務整理に関するコラムは、このへんで終わりといたします。

************************************
弁護士舛田雅彦に相談してみたい!と思った方は
ご連絡の際「マイベストプロ北海道のサイトを見た」と「マスダ」をご指名ください。
*連絡先はこちら 札幌総合法律事務所011-281-8448

この記事を書いたプロ

札幌総合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 舛田雅彦

北海道札幌市中央区北5条西11丁目17-2 [地図]
TEL:011-281-8448

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
コンサル弁護士マスダ
イメージ

舛田雅彦(マスダマサヒコ)は弁護士と中小企業診断士の資格を取得している、北海道で最初の弁護士です。弁護士としての法律に関する知識と、中小企業診断士としての...

事務所紹介
イメージ

マスダが所属する札幌総合法律事務所についてご紹介いたします。2001(平成13)年10月に設立した、札幌総合法律事務所はチームワークとフットワークをテーマに、皆様...

 
このプロの紹介記事
札幌総合法律事務所 舛田雅彦

中小企業診断士の資格を持つ“コンサル弁護士”が経営者の孤独に向き合います(1/3)

 弁護士は、トラブルが起きた時に頼るべき専門家、つまり平穏な日常からは遠い存在だと感じていませんか?札幌総合法律事務所のパートナー弁護士、舛田雅彦さんは自身でも「弁護士の世話にならないほうが幸せ」と口にしていた時期があったと言います。しかし...

舛田雅彦プロに相談してみよう!

北海道テレビ放送 マイベストプロ

北海道で最初の「中小企業診断士資格を持つ弁護士」です

会社名 : 札幌総合法律事務所
住所 : 北海道札幌市中央区北5条西11丁目17-2 [地図]
TEL : 011-281-8448

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

011-281-8448

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

舛田雅彦(ますだまさひこ)

札幌総合法律事務所

アクセスマップ

プロのおすすめコラム
相続人複数の場合に一部の相続人が同意しないと被相続人の預金は引き出せないの?

遺産分割のトラブルで良くあるパターンは、多くの良識的な相続人は別に特別な分け方を希望していないのに、一人だ...

[ マスダの解説~実際の事件から ]

あなたの契約書の「契約解除条項」は大丈夫ですか?(1)

仕事柄、顧問先等から契約書の内容のチェックを求められることが少なくありません。今回のコラムでは「契約書」...

[ ビジネス・経営 ]

賃貸居室内の自殺によって発生する家主の損害(1)

テレビのニュースを見ていたら、自分が保証人になっていた家族が賃貸住宅で自殺した直後に家主から多額の損害賠償...

[ マスダの解説~実際の事件から ]

弁護士費用のお話し(1)~弁護士に事件を依頼したらどのくらい費用がかかるのか

皆さんは、弁護士に事件を依頼するといくら支払わなければならないか、おそらく感覚的に理解することは難しいと思...

[ 弁護士業界勝手に解説 ]

倒産会社代表者の想い~万策尽きる前に対応を
イメージ

自分が経営していた会社が倒産することは、自分の収入の道を断たれることはもちろんですが、従業員を路頭に迷わせ...

[ ビジネス・経営 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ