コラム

 公開日: 2018-05-17 

有給の買い取りは応じないといけないの?

退職日が決まった従業員から、「未消化の年次有給休暇を買い取ってほしい」と言われました。
「未消化分を買上げる義務はない」と伝えると、
「年次有給休暇の残日数を把握できず、すべて消化できなかったのは、残日数の通知をしなかった会社の責任だ!」と
切り返されてしまいました。

年次有給休暇(以下、有給)の残日数を把握できなかった、とありますが、
従業員に残日数を通知する必要があるのでしょうか?
また、このような場合、買上げに応じなくてはならないのでしょうか?


【結論】 有給は管理義務があるが、通知義務は無い/有給の買上は原則NG

<年次有給休暇(以下、有給)の通知について>
有給は、就業規則にその内容を記載し、会社が残日数を管理する必要があります。
ただし、残日数の通知について法律上の規定がないため、通知義務はありません。

<有給の買い上げについて>
有給の買上げは認められていませんが、退職時に未消化の有給を会社が任意で買上げることは法律違反とはなりません。
ただし、“買上げなければならない”という義務もありません。


残日数の周知義務はないが取得状況は把握しておこう

有給については、就業規則に記載し、常時各作業場の見やすい場所へ掲示または備え付け、書面を交付するなど、厚生労働省令で定める方法によって従業員に周知する義務があります(労働基準法施行規則 第5条2項、労働基準法 第89条1項、労働基準法 第106条)。

また、各労働者の有給取得状況の把握のために、事業主は“有給の管理簿”を作成しなければなりません。
しかし、残日数の周知について規定した法律はないのです。
そのため、有給について就業規則に規定し、有給残日数を管理しておけば、通知する必要はありません。


有給の買上げは原則NG

まず、有給とは、取得日の労働義務を免除し、従業員の心身の疲労を回復させることが目的です。

行政解釈でも『年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求し得る年次有給休暇の日数を減じないし請求された日数を与えないことは、法第39条の違反である』 (昭和30年11月30日 基収第4718号)とされています。

以上のことから、金銭と引き換えの有給付与は法定日数の付与とはならず、また有給の主旨にも反するので、原則、買上げは認められないのです。

しかしながら、以下の有給を買上げることは、法律違反にならないとされています。

①退職する際に未消化の有給
②法定日数を超えて付与した有給
③時効により消滅する有給

①については、退職により請求権が消滅し、行使できなくなる有給を任意で買上げることは法律違反にはなりません。
②についても、労働基準法で定められている法定日数を超えて会社が付与していた有給を、任意で買い上げすることは法律違反ではありません。
③については、2年の時効により未消化の有給は消滅するため、それを会社が任意で買い上げるのは法律違反にはなりません。

ただし、これらは労働基準法に違反しないだけで、あくまで買上げる義務はないのです。
また、買上げる場合の支給金額についても法律では定められていないため、任意で決めることができます。
仮に買上げを制度化するのであれば、就業規則などで明確にしておく方が、その後のトラブルに発展する可能性は少ないでしょう。



当会計事務所は社会保険労務士も勤務しております。
有給の取り扱いについて不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。

この記事を書いたプロ

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税理士 岡﨑正毅

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