コラム

2014-02-26

医療事件 ~「合併症」はやむをえないものなのか?~

 最近はどこの病院でも、手術を受ける際に「同意書」への署名を求められると思います。
 この同意書は「きちんと説明を受け、手術を受けることに同意しました」という内容となっています。ですから、事前にきちんとした説明が行われていることが前提です。
 ですが、実際のところ、患者さんが理解できるようにやさしく説明してくれる病院ばかりではないのが現実だろうと思います。

 ところで、実際の口頭での説明内容と同じかどうかはともかく、ほとんどの同意書には必ず「説明した内容」が記載されています。ここに記載があれば、後に訴訟で争われたとしても「ここに書いてあるとおり説明しました」という証拠として使えるからです。

 この同意書に記載されている説明内容としてよく書かれているのは「想定される合併症」というものです。
 合併症とは、その疾患やその手術などによって典型的に生じる可能性のある症状などをいいます。医学界では「避けられずに一定確率で生じてしまうもの」を合併症と呼んでいるようなので、こう聞くと「合併症になってしまうのは仕方のないことなのか」と思いがちです。

 ですが、実は、合併症は「起こってしまってもやむを得ないもの」とは限りません。
 合併症の統計は、その疾患やその手術などで実際に生じた症例を、原因を問わず集めたものから成り立っています。もしかすると明らかなミスは除外されるのかもしれませんが、ミスかどうか微妙な場合は通常積極的にミスであるとは申告しないものです。ですから、ミスかもしれない症例が含まれることになります。

 また、その統計結果は、似た結果を同じ表現で記載するようになりますので、その表現は必然的に抽象化されてしまいます。例えば、「脳動脈瘤の手術の合併症」には「脳梗塞」が典型例として挙げられると思います。しかし、「脳梗塞」の原因は、「動脈瘤が特殊でどんな手術操作をしても破裂したはず」というやむを得ない場合もあれば、「誤って間違った血管を塞いでしまったため脳梗塞になった」という場合もあるはずです。ですが、これらはいずれも「脳動脈瘤の手術の結果、脳梗塞になった」という意味では違いがありません。ですから、積極的にミスを認めて統計から除外しなければ、違いがなくなってしまうのです。

 ですから、合併症には、お医者さんがどんなに気をつけていても避けられなかったやむをえないものだけでなく、「お医者さんのミスで生じたもの」が含まれている可能性があるのです。

 インターネットを検索してみても、合併症の説明としては「避けられずに一定確率で生じてしまうもの」という紹介の方が多いようです。ですから、一般の方ばかりでなくおそらく医療事故に慣れていない弁護士も、合併症という言葉を聞いてしまうと「やむを得ない病気だったのかもしれない」と考えてしまう可能性があります。
 ですが、上記のとおり、実は合併症にはお医者さんのミスが含まれているかもしれません。ですから、やはり事案ごとに状況をよく精査して検討しなければならないのです。

***********************************************************
私が所属する札幌おおぞら法律事務所のHPはこちらです。
ぜひご覧ください。
http://www.ozoralaw.com/
***********************************************************

この記事を書いたプロ

札幌おおぞら法律事務所 [ホームページ]

弁護士 川島英雄

北海道札幌市中央区南1条西10丁目6番地 タイムスビル3階 [地図]
TEL:011-261-5715

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
事務所紹介
おおぞら事務所が入っているビルです。

 私が所属する、札幌おおぞら法律事務所をご紹介します。 札幌おおぞら法律事務所は、平成12年8月、同期である太田賢二弁護士と田中貴文弁護士が、北海道の広々と...

こんなときにご相談ください

 誤解を恐れずに一言でいえば、おおぞら事務所では、どんな事件の相談でも取り扱っています(*)。 みなさんから見ると、弁護士に相談するべき問題なのかどうか...

 
このプロの紹介記事
川島英雄 かわしまひでお

ホームドクターのような感覚で相談できる弁護士に(1/3)

 「札幌おおぞら法律事務所」 に所属する弁護士・川島英雄さんが重点的に取り扱っているのは、離婚、親子関係、遺言、相続など家庭に関する問題。特に最近は遺産相続のトラブルが増えているとか。「資産家じゃないから」「うちはみんな仲がいいから」と楽天...

川島英雄プロに相談してみよう!

北海道テレビ放送 マイベストプロ

コミュニケーション能力と医療知識を生かし家庭・医療分野に強み

事務所名 : 札幌おおぞら法律事務所
住所 : 北海道札幌市中央区南1条西10丁目6番地 タイムスビル3階 [地図]
TEL : 011-261-5715

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

011-261-5715

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

川島英雄(かわしまひでお)

札幌おおぞら法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
交通事故 ~最近の保険会社の傾向~

 以前のコラムで、相手方が強気な主張をする傾向を感じると書きました。 交通事故の事案でいえば、相手方の保...

[ 交通事故 ]

医療事件 ~医療事故調査制度の利用~

 今年の10月から、医療事故調査制度が始まりました。 制度の内容はいろいろなところで解説されているので、...

[ 医療事件 ]

弁護士のこと ~最近の弁護士の傾向?~

 すっかりコラム執筆をご無沙汰していました。 今年度は4月から本業がかなり忙しく、執筆する余裕がなかなか...

[ 弁護士・士業のこと ]

世論調査について ~「景気・雇用対策」を並べるのはおかしい~

 以前も世論調査についての疑問を書いたことがありますが、他にも以前からずっと感じ続けている疑問が一つあるの...

[ 近況・雑感 ]

交通事故 ~とにかく証拠(資料)が大事~

 医療事故について書いたコラムで、裁判は事実が大事であると書きました。そして、事実認定には、証拠が大事であ...

[ 交通事故 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ