コラム

2014-08-07

諸外国レベルの死因究明制度の導入を

 我が国で冤罪を防止し、またその逆に犯罪が見逃されることを少しでも防止するためには、「科学力による客観的証拠の収集方法の充実」を図ることが大事です。
 その一つの方法として、諸外国と同レベルの死因究明制度を導入することがとても重要ではないかと思います。

 先日、札幌弁護士会内の勉強会で、千葉大学大学院法医学教室の岩瀬博太郎教授の講義を受ける機会がありました。岩瀬教授は、内閣府に設置された死因究明等推進会議の専門委員でもあります。
 岩瀬教授は、諸外国の死因究明制度と日本の死因究明制度を比較し、日本で行われる解剖数(正確にいえば法医解剖という種類の解剖の数であり、「病理解剖」を含みませんが、読みやすいように以下でも単に「解剖」と簡略表示します)が諸外国と比べて極めて少ないことや、日本では死因が不明な場合に解剖を行うことなく警察や医師の判断で犯罪の可能性を判断してしまうシステムとなってしまっていることを指摘しておられました。

 警察や医師が「犯罪の可能性があるかもしれない」と思った場合だけが解剖に回ることになるので、日本での解剖数は諸外国と比べて非常に少ないわけです。

 ところで、科学力を信じるのであれば、死因が不明な死体があるという場合、まずきちんと解剖を行って、体の中の状況を精査して死因を特定していくべきだと考えるのが当然だろうと思います。
 しかしそれではなぜ、そもそも解剖もしていないのに警察や医師は、犯罪の可能性の大小を決められるのでしょうか。

 実は、この、警察や医師に対する「根拠のない信頼」が、日本の最大の問題点なのではないかと思います。

 現実的には、現在の日本の医師を責めることはできません。なぜなら、そもそも解剖に回される件数自体が少なすぎるため、医師が死因を明らかにしたいと思ってわざわざ異常死として申し出たとしても、そのこと自体、その医師の診療に何か問題があったと推測されてしまう恐れがあるからです。
 現実問題として、日本の医師は、疑わしいという場合に、積極的に解剖を申し出られるような環境にないということです。
 とすると、問題は、「警察に対する根拠のない信頼」ということになりそうです。

 もちろん、今でも一人ひとりの警察官は、きっと正義感をもって職務に励んでいることと思います。そういった一人ひとりの警察官を信頼してないわけではありませんし、個々の警察官を悪く言うつもりはありません。
 しかし、結果としては、冤罪を生み出してしまうような捜査が現に行われてしまっています。ということは、今の捜査方法に全く問題がないということもできないはずです。

 問題があれば、その問題点を明らかにし、問題を解消していくことが、社会として求められるのは当然です。
 死因究明の側面からいえば、初動捜査の時点で犯罪性があるか否かを死体以外の事情から判断してしまっているのが、今の日本の捜査です。
 死体以外の情報からでも一定の情報は得られると思いますが、解剖結果も存在しない状態で、果たして科学的な根拠があるといえるのでしょうか。

 このように、死体から判明するはずの科学的根拠もないまま捜査しようとすること自体、まずは改められなければならないと思います。
 また、同時に、このような科学的根拠が薄い初動捜査で動いている警察というものを安易に信頼してしまう我々一般人の感覚も、大きく改めなければならないと思います。

 ちょうど、本年6月に、死因究明等推進計画が閣議決定され、死因究明制度が充実していく可能性は出てきているところです。
 しかし、日本社会全体が意識を変える気にならなければ、結局は「根拠のない警察任せ」で終わってしまう可能性も十分あり得ます。
 日本の死因究明制度がより充実し、少しでも早く諸外国と同レベルの死因究明制度となることを期待したいと思います。

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