コラム

 公開日: 2014-09-01  最終更新日: 2016-05-07

「中立」という幻想 ~公務員編~

 前回は、メディアに公正中立を求めることは非現実的であると書きました。
 今回は、政府や自治体、公務員といったものについても同じことが言えるということを書きたいと思います。

 確かに、公務員は「公正中立」であることが求められます。そうでなければ、全ての人に平等な行政サービスの提供ができないからです。

 では、そうだとした場合に、そこにいる公務員は、常に政治的に無色透明なのでしょうか。特定の価値観を持っていないのでしょうか。
 もちろん、答えは否です。

 公務員も人間です。人間であれば、主義主張がない、政治的に完全に無色透明である、価値観を持っていないということはありえないでしょう。
 それでも公務員が公正中立であるというのは、特定の思想を持ってはいけないということではなく、「たとえどんな思想や信条を持っていたとしても、同じ条件の場面に遭遇した場合には、平等に同じ行政サービスを提供する」ということを意味するのです。

 これは、自治体の行政サービスに限りません。例えば、裁判官も本来は同じです。たとえ内心で様々な思想を持っていたとしても、他の条件が同じであれば、思想的な理由で裁判の結論を変えることがあってはならない、ということです。
 また、公立学校でも同様です。学校の先生も当然、内心では様々な思想を持っていると思いますが、これを生徒に押し付けてはならない、ということです。
 もっとも、学校で要求されるべきなのは「特定の思想傾向を押しつけないようにすること」であって、世の中には多様な意見が存在するということを教えてはならないということではありません。学校で思想的・政治的に完全に無色透明を要求することは、多様な意見の存在を否定することにもなりかねません。それは結果として生徒たちの多様な意見を否定することになり、教育的にも好ましいとは思えません。

 このように、公務員に求められる「公正中立」とは、政治的傾向や思想、価値観などにより不当な差別的取り扱いをしないこと、特定の思想や価値観を押し付けないことであって、無色透明になるということではないのです。

 最近、自治体が、政治的傾向のある内容の集会開催を拒否したり、イベントの後援を断ったりしているという報道が見られます。
 この報道のように、最近の日本では、公的な存在に対して「完全無色透明の中立」を要求する傾向が強いように感じられてなりません。
 ですが、これまで見てきたとおり、「完全無色透明の中立」な人間など存在しませんから、実は「完全無色透明の中立」を要求するということは、非現実的な状況を無理やり作ろうとしているのと同じなのです。
 もっといってしまえば、「完全無色透明の中立」を要求するということは、それ以上意見を出すことを認めないということですから、「現状追認」ということになります。「完全無色透明の中立」を求めてしまった結果、現状追認という価値観を押しつけているのと同じことになってしまうわけです。これでは本末転倒です。

 こうした世の中の意識を変えるには、私たち一人一人が意識を変えるほかありません。
 一見聞こえのいい要求を深く考えずに要求するのではなく、世の中には多様な意見が存在するものなのだというごく当たり前のところから出発して、何が本当の「中立」なのか、何が本当に私たちのためになることなのか、よく考えることがとても大切だと思います。

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